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U2W Part2 #2

更新日:2021年2月5日

U2W Part2 第2回のスピーカーはデンマーク、コペンハーゲンにて日本と北欧を繋ぐ会社にインターンし、リビングラボについて学ばれた高倉遙輝さんです。


 

今日の内容

  • 高倉さんについて

  • デンマークに渡航を決めたわけ

  • リビングラボとは

  • Gelh Architectでの気づき

  • コロナの中で考えたこと

  • 質疑応答

 

高倉さんはこんな人

  • 現在、同志社大学社会学部に所属

  • 野球青年

  • SNS上の心理学について研究

  • リビングラボについて興味を持ち、デンマークの会社にて半年間インターン

 

デンマークへ渡航を決めたわけ


フィリピンの野球支援から生まれた参加型社会への関心


大学一年時に出会った知人が誘ってくれたことがきっかけで、フィリピンでの少年野球支援を始めた。個人で始めた道具支援活動を7人の団体に発展させていった。現在は1年1回、道具支援や野球教室、大会開催をしている。 この活動について人に伝えると、いいねと言ってくれる人は多いが、同様に行動に移す人は少なく、このことに問題意識を持った。



これは2つの問題から起こっているのでは、と考えた。 問題1:他人事と捉えてしまう。 →主体性の向上が必要→北欧の人は当事者意識が高い 例えば、例えばスウェーデン出身のグレタ・トゥーンベリが環境問題について意見を主張しているのは、学校教育が強いからなのでは。 問題2:興味や関心を持つ内容は人それぞれ。 →興味を持つ入り口を増やさないといけない→北欧のソーシャルデザイン 例えば、BIGによるコペンハーゲンのSuperkilen(スーパーキーレンパーク)の設計段階では参加型デザインが非常に意識されていた。(移民が集まりやすいエリアでの公園デザイン。故郷を思い浮かべた際に何を思うか、という質問をし、その結果世界60か国から121の遊具を集める公園の設計になった。また、コミュニティを形成するためのイベントも多数開催されている。)


自身の野球支援活動から湧き上がった問題の解決を考えていたらデンマークに行き着き、大学を休学しインターンをすることに決めた。


 

コペンハーゲンで気がついたソーシャルデザイン


パントシステム(缶デポジットのシステム) 缶の回収にデポジットがついていて、低所得者が缶を集めて生活費を稼いでいる。彼らが缶を容易に取りやすい形をしたゴミ箱が作られ街に設置されている。 余裕がある人が余裕のない人を助けるシステムが浸透している。

 

リビングラボとは

リビングラボの定義

「多様な関係者が集う場で社会問題の解決や最先端の知見について議論し、関係するみんなをパートナーとして捉え、一緒に未来を作っていくという手法」 場所ではなく、エコシステムである。この考え方がそれぞれによって形態が異なるいわば何でもあり状態なので、リビングラボの4類型を紹介する。

  1. 技術のショールーム

  2. 機能性を備えたテストベッド

  3. 家などの生活の場での実践(トヨタ、ウーブンシティなど)

  4. 生活に根付いた持続可能なテクノロジのプラットフォーム(多様な利害関係者を巻き込む技術のプラットフォーム)

リビングラボに関わる活動は以下の3つに分けられると言われている。 ・Future Centre(仮設を出す場所) ・Inovation Centre(施策を作る場所) ・リビングラボ(社会実験を行い試す) 他の2つの活動はリビングラボと分けられて考えられているが、循環する3つの活動のサイクル自体をリビングラボと呼んで良いと思っている。


 

Jan Gehl事務所とリビングラボ

ゲールアーキテクトとは

ゲールアーキテクトは2000年に設立した。キーワードが「人間中心のまちづくり」 彼らの中での優先順位

  1. 歩行者

  2. 公共交通機関

  3. ビジネスを行う、街のサービスを提供する人

  4. 個人的に使用する車やバイク

プロジェクト紹介 ●ニューヨーク 9割が車という状況を9割が歩行者という状況に変換 ●クライストチャーチ 地震により倒壊してしまった教会の再興 ●コペンハーゲン 環境問題への取り組みが多く、Gehl Architectも緑を使った提案を多々行っている。緑地帯が道路と歩行空間を緩やかにわけ、さらに空気の質を改善するなど。

 

ゲールアーキテクトの思想とランドスケープの共通点

彼らは都市内での人の活動を2種類に分類している。 「必要活動」義務的な要素を含むものであり、必要に駆られて行われる活動 「任意活動」利用者自身にその行為を行うという意志があり、時間や場所の制約がない場合にのみ行われる活動 2つをまとめた活動を「社会活動」と呼ぶ。 これらの活動は他者があって成り立つ活動である。 アクティビティ→空間→建築 という順序で考えている。住民がどういうアクティビティを欲しているかを知ったり、アクティビティを生み出したりするための方法としてリビングラボを採用。リビングラボの3つのプロセスを1つの場所でやっているのがGehl Architect。


 

ヤン・ゲールのリビングラボ運営テクニック


そもそものマインドセットとして2つのことを意識していた。

  1. 当事者従事に何を期待しているのか。 その地域の良さを一番知っているのは地域の当事者であるため、そう言った情報や、地域をどう変えていくのかを判断を下すのは当事者であるべきであると思う

  2. 参加者が、「今、街は何をしようとしているのか」を理解する。 「理解」が「参加」を促進し、「参加」が「当事者意識」を生み出す。

ワークショップでは参加者の意見を引き出し、パブリックエンゲージメントを達成するため、様々なツールを利用し、工夫がされている。

  1. 衛星写真の利用。 以前は、平面図や地図を使っていたが、地形などが分かりにくいため衛星写真を使用するようになった。地図だと読めない人がいるが、航空写真だと、地域情報等から位置を認識し、意見できる人が増えた。

  2. ポストイットの利用。 意見の大小に関わらず意見を出せたり、取り除いたりできる。体を動かしてポストイットを壁に貼るという身体的な活動も意見出しを促進させる。

  3. 参加者グループの主体的な発表。 クライストチャーチのプロジェクトでは小グループで準備から発表までを(Gehl Architectは関わらず)全て参加者に主体的に行ってもらう。

  4. レゴの利用。 将来の地域を担う子供(将来的な住民)の意見を取り入れるために使う。また、子供の意見は保守的な大人を動かすのに役立つ。

ゲールアーキテクツの役割 全体のプロセス設計やプロセス実施の支援、実際に集まった意見等のドキュメントか ファシリテータ的役割。→メタデザイナーとしての役割。



 

コペンハーゲンでの生活での気付き

街の使いやすさ

椅子の多さ、建物の豊かさ、自転車の便利さに気がついた。 木の板を床に置くことで座りやすくなるなどの工夫がある。固定された椅子は活動を制限するため、動かせる形の椅子が多い。暗い冬を乗り越えた後の夏は人が外の環境を楽しむので椅子が多い。車道と歩道で段差があり、デザインから歩いてい良い場所と車用の場所がわかりやすい。また自転車が非常に多い。 5 fingers planという都市計画プランが作られている。 コペンハーゲンの公園数は東京に比べると少ないが、1つ1つの面積が大きい(58haの面積の公園もある。)生活に緑が身近に感じられる。また、日本の知り合いへの身近に散歩したい場所がありますか、という質問にはい、と答える人も非常に多かった。 クラウドバースト対策の地域は、見た目にはわかりにくい傾斜があるデザインでひと目には災害対策のエリアとは分からず生活の一部に溶け込んでいる印象の空間だった。 最近、老人ホームの中の中庭でフェイスシールドをつけて、会話をしている人々を見る。人々がコミュニティとして関わり合えるような場があれば街がもっとよくなるのではないか。


 

質疑応答

Q. フィリピンの活動についてどのような発展を考えられていますか?(Nさん) A. 様々な社会問題について、興味を持ってもらうきっかけを作っていければ良いな、と思っています。興味を持ってもらうための発信活動をたくさんしていきたい。 C. コペンハーゲン、良くなっている。10年前に留学していたことがあるが、緑に対する意識が高まっている印象を受けた。(Tさん) Q. 理解とは具体的にはどういうことなのか詳しく教えて欲しい。(Sさん) A. 理解の根っこに機会や平等性に対する意識の違いが日本とコペンハーゲンであるように感じている。 (Sさん) クライストチャーチでは災害復興という共通のテーマがあったため、共通認識を持ちやすかったのではないか。貧困に関係なく、教育が無料なので学べるということであったり、人種や経済状況を気にしていない気がする。

Q.「社会活動を起点としたまちづくりの考え方に関する市民の方々や行政職員のリアルな意見はどうでしたか??」 社会活動から生まれる市民のアクティビティを起点に都市の空間を作り、次いで建築を作るという優先順位でまちづくりが行われているとの事ですが、大賛成です!実際にその考え方に対する、市民の方々や行政職員のリアルな反応はどのような感じでしたか? (Iさん) A. 参加している人にとっても自分達の理想の街を実現しようと思っているので、理解があると思う。参加していない一般的な街の人は、正直、分からないが、実証実験をした際の人々の反応を受けて、反応が悪い場合はアイデアを変えてさらに実証実験を行い、アイデアをブラシュアップしている。正解はないが、リビングラボという考え方が人の意見を取り入れる仕組みとして完成しているように思う。 C. 課題ファーストという考え。問題は解決は当たり前だが、さらにそこから一歩踏み込んだ課題をコペンハーゲンのデザインは行っているように思う。(Tさん) Q.「日本とコペンハーゲンでのワークショップにおける参加者の反応の違いは?」 それと恐らく日本のソフト系まちづくりの第一線を走ってらっしゃる方々の多くがデビッド・シムさんのワークショップ方や考え方に影響受けている気がしていて、ゲールアーキテクトのノウハウは日本にも多く取り入れられている実感があります。そこで、日本のワークショップとコペンハーゲンでのワークショップの違いはどうでしたか? (Iさん) A. 聞く話によると、1つの地域や1つのストリートを限定し、そこで無料のご飯をあげるから集まって、と声をかけると集まるような国民性がワークショップを行いやすい環境を作り上げているとは感じる。 段階的なコミュニティデザインを行っている印象。いきなり積極的な活動家にはならない。ゆっくりと話をしていく中で、将来的にアクティブに活動をするコミュニティが生まれている。 Q. 高倉さま 素晴らしいプレゼンありがとうございます。日本でも昨今話題となっている「ヒュッゲ?」ですが、日本の生活の中で、ヒュッゲ的な行為、暮らしの仕方で通じるものはありますか? 日本で実務の場のワークショップを多数やっているが、リングに上がって戦っているような状態。海外の創造的なワークショップとの違いに悩むことがある。日本では総論の合意を目的とした議論はしやすいのだが、核論に入っていくと意見がまとまらないことがある。どのように総論から核論へ移行しているのか。(Tさん) A. クライストチャーチのプロジェクトで意見を集めたところ10万以上の意見が集まるなど、総論的な、「街はこうしたい」という意見は集まりやすい。そこからゲールがアイデアを整理しピックアップし、実際に形として作り上げていくプロセスがあったのだが、核論的な議論のプロセスは正直わからない。 1つのアイデアが形になったという記述もあった。 色んな意見を混ぜるだけでなく1つのアイデアがブレイクスルーになる場合もあるし、実務的な議論ではそこが難しいところだな、と感じている。 ヒュッゲについて、コミュニティとして落ち着いている空間を共有しているということをヒュッゲと認識していて、リビングルームで家族とご飯を食べるのもヒュッゲと呼んだり、と日本でもあるような生活様式を言語化しているように感じている。 ホームとしてのリラックス感を非常に強く感じた。国民性も自分の意見をダイレクトに伝えるというよりも、うちに秘めて静かに伝えることが多く、親しみやすく感じる。年齢や人種等にも気にしないし、意見に対する最初の反応は、必ず良いところへ賛同を示してくれるなど、コミュニケーションが非常に上手な印象がある。 Q. リビングラボのエコシステムが実現するために場所が大事なのではないかな、と感じる。コペンハーゲンが街全体がそういう場となっているのか。場所を介すとその場所が好きになったり、思いの反復活動が生まれ、リビングラボ的な活動が長続きするのではないか。こういった考え方についてどう思われますか(Fさん) A. 場があることで人が集まるは間違いない。 鎌倉リビングラボも、参加者が集まるために場が作られていて、そこからリビングラボが発展していったという話がある。最終的には場所に帰属せずこの考え方を色んな場所で展開できたら良いと思う。 C. Space Ten、4分類の1番〜2番に当てはまるプロジェクトだと思う。 デザイナーの意見を展示、それを基に議論を盛り上げているというアイデアなのかもしれない。 C. 産官学を結ぶ役割が必要で、日本では企業から片足を突っ込みながらそれを繋ぐと聞いたが、その役割にアサインされる人がおり、そのプロジェクトが成功しないと報酬がもらえないという仕組みがあるためよし真剣に繋ぐ働きをする人がいる。 Q. 直接的な成果が見えない人材育成に投資をするのが難しいと思うのが、どう考えられているか。またどういうバックグラウンドの人がリビングラボに関わっているのか。 A. その分野に知識を持っている人でないとアサインされない。社会経験があり、産官学を繋げるような人がアサインされているのだと思う。コミュニケーションデザイン学という分野が大学にあり、そこからの人がアサインされているのかな??(という仮説を持ちました。) C. どの業種でもそういうマインドを持っている人がいればできるのではないかな、と思いました。 Q. 短い期間で広く深く学ばれていることに感動しました。具体的な形としてもの作り、設計のコントロールはどうされているのか、教えて欲しいです。 A. アイデアにどう人を巻き込むか、というところについて学んでいました。 Q.形に落とし込む際に意見を聞いたところから断絶するということもあり、良い事例などありますか? A. 実効性は関係なく、アイデアを出すのだが、途中からアイデアを絞り込むフェーズがある。それを支える長期的な資金が出ているということも聞けた。 1960年代に労働者運動が起こり、それ以降の参加型デザインが浸透した。 97年に参加型デザインを政策の一部として取り入れ、そのような形をした場合に資金を支援するなどの動きがあったため、発展していったと思う。定量的・定性的な調査も行っている。 Q. とても面白かったです。リビングラボでは、定量的な分析は行われていますか?また、地域愛着を育む草の根的活動は盛んでしょうか?先週スマートシティなどの議論もあったがそれにITはどう絡みますか?(Mさん) A. 街の地域愛について、データを集める取り組みもある。自転車のスピードを調べ、街の交通の最適化を目指す取り組みもあり、石畳の工事を行う際に、どの石畳が良いかを地域住民に問う実験が行われたり、街を好きになる工夫が多々あるように感じている。 ITに親しんでもらえるか、という部分に力が入っている。統計局のウェブサイト(Denmark Statistics)がシンプルで見やすい。利用者の意見を取り入れ、ITを人に親しみやすい形にしようという試みがある。 ボストン、豪雪地帯で、消火栓が雪に埋もれる問題があった。雪に埋もれた消火栓の雪をどけて情報提供した市民の名前を消火栓の名前として採用するなど、地域愛とITの繋がりに関する提案が多数行われている。 調布市では、地域に関する電子マップを市民が編集、更新するというイベントがあった。完成したマップをより多くの人に見てもらえるように、公共のモニターで流してもらうという派生的な活動に発展したりということもあった。 デンマークは人をアイデアに惹きつけるところが強いがその後の活動への発展が課題と言われており、逆にそういった活動に発展するところは日本の強み。 “スケール”するという部分が日本の街づくりの良さかもしれない。 C. リビングラボも日野市も活動をしている。街の機運をどう高めるかという点で非常に重要な考え方だと思った。なぜこれを続けたいのかというところが課題だと感じている。「市民になぜ問いかけたいのか」について今日のお話がとても参考になりました。小さな場を作っていくということろで、ランドスケープにも繋がる部分がある。リビングラボ的な考え方を持つ人の育て方に参考になる話でした。今までの市民協働は、堅いものが多く、間口をどう広げるか、ということが課題だと思っていたのでとても参考になりました。(Sさん)

Q. 高倉さん、大変貴重なお話をありがとうございます!知らない事ばかりでとても勉強になりました。少しプレゼン内容には含まれていらっしゃらなかった部分をお伺いし申し訳ございませんが、クリスチャニアという特異的な地区を中心地エリアで共存していることもかなり特徴的だと思うのですが、クリスチャニアに関してもリビングラボを取り入れて再構築されている部分もあるのでしょうか? (Mさん) A. クリスチャニアは大麻などが黙認されていたり、ジェンダーや国籍など様々な境が曖昧になっているエリアで、その曖昧さを楽しんでいるエリアだと思います。リビングラボ的な取り組みはあまり聞かないが。 落書きを寛容するところも、人が街に興味を持つきっかけになっているのではないかと思う。

Q. 教育が地域や空間についての主体的な意見を育んでいる部分があるというお話がありましたが、学校教育などでもそういう取り組みがあるのでしょうか? A. 小学生の頃から、長期的にグループワークを行うなど、地球環境全体に対する教育があるらしくある日から家族全体で菜食主義に切り替わったり、などということも聞いた。 Q. 高倉さんの今後についても聞きたいです。(Fさん) A.

就活中で、社会起業家が集まる企業と広告代理店を検討中。引き続き人にアイデアに対して人に興味を持ってもらう仕事に興味がある。 行政やコミュニティデザインをやっている設計事務所など街のことをやっている人もいる。


 

ライター中島より


今回のU2Wにて、私はリビングラボという考え方について学ばせていただきました。高倉さん、本当に素晴らしいプレゼンテーションありがとうございました。ランドスケープとの繋がりについてもお話をして頂きましたが、正しくその通りで、ランドスケープも、人が空間とどう関わり、使うかをデザインする仕事だと認識しております。どうやって使う人と空間を結びつけ、考えてもらい、今後、使ってもらうかを引き出すヒントがリビングラボという考え方にたくさん詰まっていました。今後、リビングラボから生まれるランドスケープにも挑戦して行きたいです。今後もどうぞよろしくお願いいたします。


中島悠輔






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