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混じり合う街トロント



自己紹介

初めまして。大阪府枚方市出身、カナダはトロント在住の近藤良平です。

枚方・京都・東京とゆかりの土地は拡大を進め、トロントにまでランドスケープ道が繋がり今に至ります。

幼少時代は生き物への興味が強かったように思います。生き物の鮮やかな色やフォルムに美を見ていたのはもちろん、捕獲・飼育・観察が趣味で、海洋生物や爬虫類図鑑の分布と飼育方法の欄を食い入るように読んでいました。小さな世界の中での環境作りとその中の一個の個体からその背景にある他者との関係性、引いては壮大なランドスケープが想起され、小さな世界が大きな地球に繋がっている感覚があるように思います。




そんな幼少時代を経ましたが、中学・高校ではそんなことを忘れ、武蔵野美術大学建築学科に進学しました。そこでランドスケープアーキテクチャーという分野に出会い、トロント大学のランドスケープアーキテクチャー学科(Master of Landscape Architectue,University of Toronto,John H. Daniels Faculty of Architecture, Landscape and Design)へと進みました。


今回はそんな私が思うトロントの風景について少し語らせていただこうかなと思います。


大学キャンパス内を歩くキツネ

 

目次

 


山のない風景

日本からトロントに来て最初に思うことは山がないということ。

日本で山がない場所というのは見つけることが難しいぐらいであったので驚きました。トロントは元々大昔に隆起が終わり、おそよ12000年前の氷河期の終わりぐらいに、流れだす氷河によって削られた場所であり、平坦な地形と氷河湖や渓谷といった地形が特徴的です。


トロントの街は二つの渓谷に挟まれ、The Toronto Ravine Systemという地理的特徴を持ちます。この渓谷システムは都市部で見られるもの中では世界一大きなもので、深い渓谷に沿って巨大な森が発達しており、都市公園や都市・郊外のランドスケープは渓谷と繋がり、大きなシステムとなっています。都市自体この渓谷システムの恩恵を受ける形で発達していて、切っても切れない関係にあります。近年は気候変動と都市化の影響で都市洪水が頻発していますが、各所の個別の取り組みと同時に、中心部での洪水対策と渓谷エリアの洪水対策は一つの渓谷システムストラテジーで包括的に練られています




 

多様性を受け入れ更新していく都市

トロントには250以上の民族が暮らし、常に多様な文化に晒されます。

言語に関しましても、公用語の英語はもちろん使われるのですが、その話者は英語を母国語としていない人も多く、違う国の言語や方言を聞かない日は無いと思います。そのような多様な文化を受け入れるトロントでは、多様な価値観に寛容であるため、新しい価値観が他の地域と比べても早くから取り入れられがちで、それは風景にも表れます。1981年から続くPride Paradeはトロントでもその象徴的な屋外イベントであり、LGBTQの文化を讃え、社交の場として根付いており、Paradeで使われる通りは日頃からマイノリティの文化で溢れ賑わっています。




また、カナダ最大の都市ということもあり、コンサートツアーの開催地になったり、アメリカのメジャースポーツのチームがカナダの中で唯一存在したり、アメリカ文化を最先端で取り入れやすい風土でもあると思います。


また、トロントは急速に発達が進み、街の建築物の更新も早く、至る所でその動きを文字通り見ることができます。



建築やランドスケープのデザインストラテジーとしては既存のものに新しいものを拡張するようなものが多いように思います。私の学び舎であった学科棟はその好例です。古い建物に新しい部分が拡張されています。トロント大学の建築は植民地時代の遺産であり、先住民が暮らす自然豊かな土地の上を塗り替える形で存在する。大学のランドスケープ学科では先住民の歴史や文化・カナダの植民地支配の歴史・建築様式を建築・ランドスケープの視点から多角的に教育しています。




Tommy Thompson Park は街から出るレンガやコンクリートといった廃棄物の廃棄場所が長い年月をかけて野生生物のサンクチュアリのような状態になったのを公園化して保護した場所です。この美しいランドスケープが街のスクラップアンドビルドの結果として表れているところがとても興味深い場所です。



Evergreen Brick Works

Don River にある、採石場とレンガ工場の跡地を公園化したもの。公園内にはカフェや展示スペース、マーケットが併設され、ここの歴史とドン川の渓谷について学ぶことができる。




 

トロントランドスケープ選

最後に上記以外のトロントの街で出会ったランドスケープを載せて終わりたいと思います。

The Bentway

高架下を公園化したトロントの新名所。仮設のレストランや冬場はスケートリンクが見られる。



Sugar Beach Park

トロントウォーターフロントにある公園で、埋立地の上に砂のビーチが突如現れる。歴史ある砂糖工場が隣接し、砂糖の甘い香りがする。夏には湖の上に大きなスクリーンが浮かび、屋外映画館イベントが行われる。




West Toronto Railpath

鉄道路線の跡地がトレイルになっている。




The Fishway, Cootes Paradise

ここでは小さな湾内に外来魚が入り込まないように機械で組み上げた魚を手作業で外来種と在来種を仕分けしている魚の関所みたいなところ。日中作業中を見学可能で丁寧に魚の種類と仕事内容を解説してもらえます。







 

おわりに

トロントで今現在見られる建物や公園などはヨーロッパや日本の他の都市とは違い比較的歴史が浅いので新しいものが多いですが、その分新しい考えを取り入れ作られたり、発展しているので、刷新的な都市デザインやランドスケープデザインが多い印象です。その新しいランドスケープの下地には12000年前の氷河の動きや先住民たちの文化や生活、自然の躍動が確実に存在し、それが混ざり合い見え隠れしています。そしてこの土地の現代のランドスケープデザインからは過去の風景や営みに対する敬意と過去から現在への繋がりを意識しているものが多いように思います。風景が急速に更新されていく中で失われていくものと増えていくものの中から、そして現れては消える儚い風景の中に存在するおもしろさや美しさを自分も拾いあげていければなと思います。



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