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茅葺きに導かれて 建築・ランドスケープ・宇宙を巡る旅

更新日:2021年11月10日





イントロダクション


はじめまして、京都の里山で、平安京をつくり、支えてきた里山で茅葺きの研究をしている西山史一と申します。

よろしくお願いいたします!


茅葺き?

白川郷?

里山?

平安京?

どんなことをしているの?

ランドスケープと関係あるの?


そんな疑問にお答えしていきます。

茅葺きは実は白川郷だけではないんですよ!

みなさんよくご存知の京都市内から車で1時間の場所に茅葺屋根がたくさんあるんです!



 

目次

‐ 幼少の頃の興味

‐ 経歴

‐ 平安京をつくり支えてきた里山に導かれて

‐ 茅葺きの研究

‐ これからの道


 





これが今住んでいる京都市右京区京北地域です。昔は山国と言われていた地域で、平安京をつくるために、その建築物の木材を山から切り出し、桂川に流し、今の嵐山くらいまで流して運河で中心部まで運び、天皇の御所や神社仏閣、貴族の館をはじめ、都をつくってきたまちです。その後も天皇が即位する時の大嘗祭というお祭りで使われる大嘗宮の御用材、天皇の玉座である高御座の御用材もここから提供されてきました。他にも鮎や食糧など、都の生活を支えてきました。ここがないと平安京はなかった、日本の歴史は変わっていたかもしれない、そんな場所でもあるのです。そんなまちに茅葺屋根が点在しています。

では、なぜそこに行って茅葺屋根を研究するようになったのか、それを話していきましょう。



 

幼少の頃の興味


僕は、福島県いわき市で生まれ、3歳からは浪江町というところで中学卒業まで育ちました。森から川、海までつながり、自然豊かで食べ物もおいしい、そんな田舎町でした。週末は家族で出かけることが多く、東北、北関東など各県のいろんな場所をまわっていました。いろんな場所の風景を眺めているのが一番楽しくて、幼稚園の頃には家の砂場で山をつくり、ジョウロで水を流し川をつくり、橋を渡し、道路を引っ張り、家や学校、お店をつくり、パソコンのマウスくらいの大きさの石を拾ってきて車に見立てて、姉や幼馴染を動員して笑、まちづくり遊びをする、そんな変わった遊びをしている少年でした。小学生に上がった頃からは、行った先々を忠実に大学ノートに再現したいと、自宅から行った先までの地図を描き始めました。それがだんだんと空想のまち、都市になっていき、勝手に自分で自治体の名前もつくり、田舎町から地方都市、東京のような大都市まで延々と50冊くらい描いていました。スケールというものも知らない時でしたが、改めて後で計算してみると、ちょうど約1/1000のスケールでした笑。小学校高学年の時はテレビゲームで都市開発のゲームもしていました。その他にもミニ四駆とかガンダムとか飛行機とか他の男子がするような遊びもしていましたが、そんな変わった趣味をもっていて、親や周りからは心配もされていました笑



 

経歴


今思えばランドスケープや都市計画をやりたい人間だったのでしょう。でも、母親が東京の出身だったこともあり、小さい頃から頻繁に東京にも遊びに行っていました。そこで、超高層ビルやドーム、タワーなど大きな建築や構造物を観て、だんだんと大きな建築にも憧れるようになりました。また、新幹線や高速道路などのインフラにも憧れるようになりました。建築土木、都市計画、ランドスケープ、そんな一体的な興味をもっていました。そして、中学1年生の夏、担任の先生と両親が面談をしていた時、先生が高専という学校に行けば建築を勉強できると教えてくれました。料理人をしている父親は昔、高専生をバイトで使っていたこともあり好印象だったのか、高専はいいところだから行ってみてはどうだと言ってくれました。それから普通校に行くという選択肢は全く考えずに、そのまま運よく高専(宮城高専)に入り、建築を学び始めました。15歳の時でした。その頃から現代の建築よりも宇宙や未来の一歩先の建築に興味をもつようになります。

高専に入り、建築を観たり、図面を引いたり、建築学の勉強をしたり、まちづくりの研究をしたりという5年間を経て、東京都立大学建築学科に編入します。東大を目指していたのにその時もいろいろとハプニングがあって夢叶わずでした。長くなるので割愛します笑。2年後に東京大学大学院建築学専攻に入学します。研究室は宇宙建築もやっているところで、僕は水やエネルギーを循環させ、既存インフラに依存しなくても自律できる建築、壁や窓は膜の組み合わせで、光や熱、音など室内環境を個人の好みで調節できる未来の建築を研究していました。その研究はドイツのミュンヘン工科大学に留学して深めていきました。

ここまで書いて、ランドスケープと関りがあるの?

と思われるかもしれません。そういうこともやっていましたが、一方では、高専と学部の卒業設計では都市スケールの提案をしていたり、ミュンヘン工科大学でのスタジオもイタリアのジェノヴァがサイトである都市計画のスタジオでした。そんな感じで、建築やそのディテールを観たり、一方では都市スケールを考えるといった一体的な興味をもっている人間でした。


それから日本に帰国し、プロフェッサーアーキテクトを目指していた頃、研究室で大問題が起こりました。当時、研究でついていた助手が海外出身の方だったのですが、業績や経歴を詐称していたということが発覚し、研究室は稼動できない状態に追い込まれます。その助手の博士論文も7割ほどはコピペで、大学前代未聞の博士論文取り下げにもなりました。その方は建築界では結構有名な人で宇宙飛行士候補などいろんなすごい経歴をもっていたのですが、ほぼすべてウソ!でした笑。テレビや新聞などメディアでも報じられ、それまで信じていた人、モノ、そして自分自身が信じられなくなり、大学にも行けなくなり、本当にお先真っ暗になり、小さい頃から建築のことしか考えてこなかった自分を責めてしまいました。崖から落とされ、寝ていても奈落の底に落ちていくんじゃないか、そんな感覚を毎日感じていました。


 


平安京をつくり支えてきた里山に導かれて


その後に、2011年3月11日が来ました。慣れ親しんだ場所が津波で失われ、原発事故で警戒区域になり、多くの人々が亡くなったり、避難生活になったり。自分自身は福島に1年間ほど戻っていましたが、1週間前の3月4日に東京に帰っており避難生活をすることはありませんでした。しかし、大学のこととともにダブルパンチですぐには立ち直れずにいましたが、だんだんと日本の歴史や伝統に興味をもつようになり、それからお茶や日本刀、陶芸などに興味が出て、全国各地を旅するようにもなりました。いろんな各地のいろんな風景、文化、自然、人々に出会い、ゲストハウスに泊まるといろんな面白い人たちがいて、楽しく、それまで建築の世界しか知らなかった、やろうとしていなかった自分にとっても新鮮なことでした。

同時に、この世の真理とは何か、ということにも興味をもつようになりました。ドイツに留学していた時に教会建築を多く観ていたということもあり、キリスト教ではどういうことを言っているのか、仏教では、神道では、と古代からの信仰はどのようなものであったか、はたまた宇宙の構造、成り立ち、地球の動き、それと自分自身との関係性、自分はどう捉えるかということを様々な経験を反芻しながら考えてきました。ちょっと気になったのは気候変動や温暖化は二酸化炭素が大きな要因でその対策をするのが最重要課題だと世界中で言われていますが、本当にそれだけだろうかという疑問も8年ほど前からありました。というのも、地球の自転、公転、太陽活動、磁極の変動などを観ていくと大きな変動期にあるからです。その変動を考慮した社会、建築都市づくりを考えていく必要があるのではないかと考えてきました。その中で、かつてやっていたような、そして、前職でやっていたような技術に頼った形はいつか想定外のことが起これば福島の原発事故のように破綻するだろうということも思いました。



 


茅葺きの研究





そういうこともあり、導かれるようにして茅葺屋根にたどり着いたわけです。茅葺きには宇宙と人と自然の真理が詰まっているように感じました。茅葺屋根は約20年から40年ほどで葺き替えをしますが、降ろした茅は田畑の肥料に使われてきました。木造建築は解体ができ、移築や転用、減築、増築もできます。部材が使えなくなったら薪にしてあたたかい囲炉裏の火にすることができます。その灰はまた田畑の肥料になります。資源の循環だけではありません。今後の地球環境を考えると、温暖化、寒冷化、地震、驚異的な大災害は想定しておかなければならないでしょう。その時に身近にある資源で家をつくり、生活を維持していく必要があります。茅は根っこが約1m、背丈は2mほど。針葉樹は台風で時として簡単に倒れます。しかし、茅は強い。そして、土壌や水や空気を浄化し、獣害除けにもなります。さらには、茅葺屋根は宇宙とつながるための装置でもあったのです。天皇が即位する大嘗祭では1300年以上、茅葺屋根でしたが、それは宇宙の力とつながることによって、天皇は天皇になるということが信じられてきたからです。それは、音、熱、電磁波、様々なことを遮断し、何もない空の空間をつくることができる屋根のつくりだったからです。

他にも、特に京都周辺の茅葺屋根のつくりは、天平時代、平安時代の疫病とともに進化してきた屋根のつくりでもあります。そして、ヨーロッパで進められているような現代建築にも使えるし、アートや家具にも、内装材、断熱材としても使える。一般的な森林や植物がC3植物で、高温乾燥した環境下では光合成よりも呼吸を活発にしてしまう一方、茅はC4植物なので、そうした環境でも光合成を活発にしてくれ、二酸化炭素を吸収してくれ、屋根にすれば屋根に炭素固定してくれます。結に代表されるような地域コミュニティを育てる材料にもなる。最近、宇宙開発が世界中で活発になってきていますが、人工的な空間では人間は精神的にも肉体的にも数か月しかもたないということは数十年前のアメリカのバイオスフィア2プロジェクトで明らかになっています。その一方、茅葺屋根は微生物と共生し、多様な微生物環境に囲まれ、発酵食品を育て、人も長生きし、最後はピンピンコロリという人が多い。微生物環境を調べると家の内側と外側でほとんど同じ微生物環境にある。病原性の菌も発見されなかった。それは家の中にいるのに、外にいるのと同じことを意味します。また、イネ科の植物である茅は納豆菌をはじめ多くの菌を出している。それによって免疫力を上げる可能性もあります。

などなど茅、茅葺きは現代に通じる多くの効果を生み出してくれます。過去のものを過去のものとして観るのではなく、数百年、数千年続いてきた先人の智慧、営みには環境変化に適応してきた本質的な智慧が詰まっているという視点で理解し、現代に応用していくことがこれからの地球環境と人の文明を考える上では必要なことかもしれません。



 

これからの道


茅葺屋根は森から海までの大きな自然の循環や様々な生きものの住処をつくってくれるものでもあります。10月1日から3日までは長崎県諫早市で「森里海を結ぶフォーラム」というものを開催し、小中高の教科書にも載っている気仙沼でカキ養殖をしている畠山さん、環境省の事務次官の中井徳太郎さん、元NHKアナウンサーで世界的に活躍されている野中さん、世界中を旅し自然との共生を発信しているNOMAさん、全国各地で自然の再生活動をしているみなさんに来ていただいてフォーラムを開いていました。今の自然は人体に例えると血行が悪くなっていて不健康、機能不全を起こしがちな状況に似ています。人も地球も血行をよくして、栄養を取って、免疫力を上げて、自然治癒力を高める必要がありますね!


また、中高層木造建築の国際会議WOOD RISE KYOTO 2021というイベントも最近ありました。そこでは、隈研吾さんも講演していましたが、隈さんは茅葺きを設計されていたということはご存知でしたか?講演が終わった後、一緒にやっていきましょうと話していました。これからが楽しみです。


それ以外も、茅葺きを中心に、人と自然の健康的な循環をつくれる建築、都市、ランドスケープをつくっていきたいと考えています!


とまだまだ茅葺きについて書きたいところですが、また次回以降に取っておきます!笑


参考に、京北と茅葺きについて分かる動画があります!

実はこちらに出演もしています!(NHKの国際放送であるNHK WORLDの番組です)


https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/ondemand/video/2029148/


読んでいただき、ありがとうございました!


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